コラム

2024/01/16 技能実習制度と新制度「育成就労制度」の違いは?受け入れ企業の影響は?

技能実習制度は新制度「育成就労制度(仮称)」に移行予定

技能実習制度が新制度に移行することが発表されました。 新制度は「育成就労制度(仮称)」(以下、育成就労制度)と呼ばれ、技能実習制度の廃止後に導入される予定です。

技能実習制度の問題点

日本の技能実習制度が新しい「育成就労制度」に移行することは、いくつかの問題点を解決しようとする試みです。現行の技能実習制度には以下のような問題が指摘されています:

  1. 人権侵害と労働権の問題:技能実習生に対する不適切な労働条件や、長時間労働、低賃金、さらには虐待の報告がありました。これらは基本的な人権侵害と見なされています。
  2. 技能の不足と教育の不足:制度の目的は、実習生が日本で技能を習得し、母国での就職に役立てることですが、実際には十分な技能教育が提供されていないケースが多いと報告されています。
  3. 監視・管理の不備:実習生の雇用状況や福祉に関する監視体制が不十分で、不正行為や搾取を防ぐための効果的なメカニズムが欠けていると指摘されています。
  4. 労働市場への影響:一部では、技能実習制度が低コストの労働力を提供する手段として利用され、日本の労働市場に悪影響を及ぼしているとの懸念があります。
  5. 実習生の権利保護の不足:実習生は労働組合への参加や労働関連の裁判を起こす権利が限られており、権利を主張することが困難です。

新しい「育成就労制度」はこれらの問題に対処し、より公正で効果的な外国人労働者の受け入れを目指すことになります。

技能実習制度はと新制度「育成就労制度」の違い

新制度では、外国人労働者の育成期間を原則として3年とし、一定の日本語能力試験と技能検定試験に合格するなどの条件を満たすことで2年目以降に受け入れ先の転籍が認められるとしています。

新制度の導入により、外国人の長期雇用が見込めるようになるとされています。

「技能実習制度」と「育成就労制度」の主な違い

項目技能実習制度育成就労制度
在留資格技能実習育成就労
在留期間最長5年最長3年
転籍原則不可一定の条件を満たせば可能
日本語能力原則不要一定の水準が必要
職種特定技能の12職種以外もあり特定技能の12職種に限定
受け入れ人数不透明透明化
人材育成目的の一つ目的の中心
人材確保目的の一つ目的の中心

「技能実習制度」は、外国人労働者に技能を教育することを目的としており、最長5年間の在留期間が設けられています。一方、「育成就労制度」は、外国人労働者に技能を教育することと、日本の労働力不足を補うことを目的としており、最長3年間の在留期間が設けられています。

また、「技能実習制度」では、原則として転籍が認められていませんでしたが、「育成就労制度」では、一定の条件を満たせば転籍が可能になっています。さらに、「育成就労制度」では、一定の日本語能力が必要とされています。

職種については、「技能実習制度」では、特定技能の12職種以外にも多数の職種がありましたが、「育成就労制度」では、特定技能の12職種に限定されています。

受け入れ人数については、「技能実習制度」では、不透明な点が多かったのに対し、「育成就労制度」では、透明化されることになっています。

人材育成については、「技能実習制度」でも目的の一つでしたが、「育成就労制度」では、目的の中心に据えられています。一方、「技能実習制度」では、外国人労働者の技能教育を通じて、日本の産業界に貢献することが目的でしたが、「育成就労制度」では、日本の労働力不足を補うことが目的になっています。

新制度「育成就労制度」の受け入れ企業への影響

日本の技能実習制度が新しい「育成就労制度」に移行することは、受け入れ企業にも多くの影響を及ぼします。この移行により予想される主な影響は以下の通りです:

  1. 厳格化される労働基準の遵守:新制度では、企業がより厳格な労働基準を遵守することが求められるでしょう。これには、適切な賃金の支払い、労働時間の管理、適切な労働条件の提供などが含まれます。
  2. 管理・監督体制の強化:新制度下では、実習生の管理と監督に関してより厳しい基準や手順が設けられる可能性があります。これには、実習生の権利を保護し、不正行為を防止するための体制の整備が含まれるでしょう。
  3. 教育・研修プログラムの充実:新制度では、技能習得と専門知識の向上に重点を置くため、企業はより充実した教育プログラムや研修を提供することが求められるかもしれません。
  4. コスト増加の可能性:より厳格な規制と管理体制の導入により、企業の運営コストが増加する可能性があります。これには、人件費、管理費、教育研修費などが含まれる可能性があります。
  5. 採用プロセスの変更:新制度においては、実習生の選考や採用プロセスも変更される可能性があり、企業はより透明で公正な採用手法を実施する必要があるかもしれません。
  6. 国際的評価への影響:新制度は国際社会における日本の労働環境と人権基準に対する評価を向上させる可能性があります。これは、企業のグローバルな評判とビジネス機会にも良い影響を与えるかもしれません。

これらの変更は、企業にとって課題となる可能性がありますが、長期的にはより持続可能で公正な労働環境の構築に貢献することになるでしょう。

まとめ:技能実習制度から育成就労制度への移行とその企業への影響

技能実習制度から新しい「育成就労制度」への移行は、労働環境の改善と外国人労働者の権利保護を目的としています。この変更は、技能実習生への不適切な労働条件、不十分な教育、および監視体制の欠如など、現行制度のさまざまな問題点に対処するために行われます。新制度では、労働基準の厳格な遵守、監視と管理体制の強化、教育と研修プログラムの充実などが求められます。これにより、企業の運営コストは増加する可能性がありますが、より透明で公正な採用プロセスや、国際社会における日本の労働環境の評価の向上にもつながるでしょう。結果として、企業は課題に直面するかもしれませんが、より持続可能で公正な労働環境を構築する機会を得ることになります。